1-5

「たまに来てくれたと思ったら、女王女王って……いつもそればかりじゃない! 今度の女王のことがそんなに気に入ったのかしら!?」

「――。一体何を言っている。俺が女王のもとへ行くのは、それが俺の役目だからだ。でなければあんな無能な女王のもとへなど、誰が行くか」

「そんなの嘘よっ! いくらロゼリオンだからって、異常だわっ!」

「馬鹿馬鹿しい」

「そっ、そうよ。あなた女王を好きになったんだわ! 私よりも、大切なのでしょう!?」

 瞬間、ナイトはエリーゼの手を振り払い、静かな怒りを感じさせる低い声で言った。

「――お前“より”も、だと? フッ、勘違いするな。俺は愛だの好きだのという感情でお前を見たことはない。
俺はお前の“特別な血”を求め、お前は俺の地位を利用している。お互いの利害が一致した、ただそれだけの関係だったはずだろう」

「なっ――!」

 ナイトは絶句するエリーゼをよそに、侮蔑を込めた視線を送った。

「もう一度言う。俺が女王の元へ行くのは、俺が“薔薇の騎士(ロゼリオン)”だからだ。それ以上でも以下でもない。そういうくだらん恋愛ごっこは、他の男とでもするんだな。――いくらでも居るだろう?」

 エリーゼははっとして俯(うつむ)き、身体をわななかせ叫ぶ。

「……な、何よっ! あなたに私の気持ちなんてわからないっ! わからないわ!」

「――そうか」

 エリーゼの声は空(むな)しく閉じられた扉に遮られた。

[ 8/34 ]

[†BACK] [NEXT†]
[しおりを挟む]
[表紙へ]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -