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「たまに来てくれたと思ったら、女王女王って……いつもそればかりじゃない! 今度の女王のことがそんなに気に入ったのかしら!?」
「――。一体何を言っている。俺が女王のもとへ行くのは、それが俺の役目だからだ。でなければあんな無能な女王のもとへなど、誰が行くか」
「そんなの嘘よっ! いくらロゼリオンだからって、異常だわっ!」
「馬鹿馬鹿しい」
「そっ、そうよ。あなた女王を好きになったんだわ! 私よりも、大切なのでしょう!?」
瞬間、ナイトはエリーゼの手を振り払い、静かな怒りを感じさせる低い声で言った。
「――お前“より”も、だと? フッ、勘違いするな。俺は愛だの好きだのという感情でお前を見たことはない。
俺はお前の“特別な血”を求め、お前は俺の地位を利用している。お互いの利害が一致した、ただそれだけの関係だったはずだろう」
「なっ――!」
ナイトは絶句するエリーゼをよそに、侮蔑を込めた視線を送った。
「もう一度言う。俺が女王の元へ行くのは、俺が“薔薇の騎士(ロゼリオン)”だからだ。それ以上でも以下でもない。そういうくだらん恋愛ごっこは、他の男とでもするんだな。――いくらでも居るだろう?」
エリーゼははっとして俯(うつむ)き、身体をわななかせ叫ぶ。
「……な、何よっ! あなたに私の気持ちなんてわからないっ! わからないわ!」
「――そうか」
エリーゼの声は空(むな)しく閉じられた扉に遮られた。
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