2-1



我が君



◇ ◇ ◇


「凛(りん)先輩、これ受け取ってください」

 そう言って女の子は、頬を真っ赤に染めながら小さな箱を差し出してきた。
 青いリボンで綺麗にラッピングされたバレンタインチョコレートで、メッセージカードまでついている。

「あ、ありがとう」

「いえ。あ、あの、それじゃ」

 凛が引きつった笑顔で答えると、女の子はますます顔を赤らめてそれじゃあと駆け足で走り去っていった。

「相変わらずモテるね凛は。女の子に」

「あのね柚衣(ユエ)、全然嬉しくないんだけど」

 憮然として振り返れば、そこには幼なじみであり親友の柚衣(ユエ)が立っているではないか。
 黒い制服に肩までほどの赤みがかった茶髪だが、凛とは違って綺麗なストレートだ。
 凛は柚衣の髪型が羨ましくて茶髪にしてみたが、髪質までは真似できなかったのである。
 
「おはよ」

 そう言って制服のスカートを靡(なび)かせながら走り寄ってきた柚衣は、凛の鞄の中を覗き込んで顔をしかめた。

「ホワイトデー大変そうね」

 鞄にはすでに数個のチョコレートが入っている。「本当だよ。私のどこがいいんだろう」

 凛はうんざりしたようにため息を吐いた。

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