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薔薇の女王
-Une rose de vampires-
prologue
深夜、あたりを闇が支配する中、空にはひっそりと満月が輝いている。
しかしそれも、空を覆い尽くす暗雲によって今にも姿を消してしまいそうだった。
けたたましく吹く風が深く広がる森の木々にぶつかって、辺りへと不気味に響きわたり、夜空には沢山の蝙蝠(こうもり)達が、羽音を響かせながら蠢(うごめ)いている。
その森の麓(ふもと)には、異様なほど大きな存在感を示して佇(たたず)む城があった。
それは、レンガ造りのこの城全体が黒であるからだろう。
闇の中にそびえ立つ、夜の闇よりもなお漆黒の城。
それは、夜空をも覆い隠してしまいそうな程巨大なヴァンパイア達の城であった。
しかしよく見ると細部には漆黒の装飾が施され、豪華な造りを感じさせる。
闇の世界を支配する主(あるじ)が住むこの城は、“レヴァンタイユ城”というのだった。
城の門をくぐり内部へと入ると、外とは別世界のような静けさが保たれている。
昼間は大勢のモノ達でにぎやかなこの城も、今は静寂に包まれていた。
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