3-43

「いやっ! やめて!」

 瞬間、凜はついに耐え切れなくなり大きな悲鳴をあげた。

「誰だ?」

 ナイトが低く叫んで素早く振り返る。

「いや。お願いもうやめて!」

「「お前」」「「凜さん!」」

 ナイトとグレイズの声が重なった。
 凜に驚いたグレイズは囚人を開放する。
 そして慌てたように二人がこちらに歩み寄ってくる。

「いや、来ないで! この人殺しの化け物めっ!」

 凜は目に涙を滲ませ、全身の力を奮い立たせて叫んだ。
 二人の動きが止まる。
 瞬間、凜は出口へと思いきり走り出した。

 涙が堰を切ったようにあふれ出す。
 怖いとかそういう感情よりも、なぜ悲しいのか、苦しいのかがわからない。

 ただ最後に見た二人の悲しげな表情が、脳裏に焼きついて離れなかった。

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