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「いやっ! やめて!」
瞬間、凜はついに耐え切れなくなり大きな悲鳴をあげた。
「誰だ?」
ナイトが低く叫んで素早く振り返る。
「いや。お願いもうやめて!」
「「お前」」「「凜さん!」」
ナイトとグレイズの声が重なった。
凜に驚いたグレイズは囚人を開放する。
そして慌てたように二人がこちらに歩み寄ってくる。
「いや、来ないで! この人殺しの化け物めっ!」
凜は目に涙を滲ませ、全身の力を奮い立たせて叫んだ。
二人の動きが止まる。
瞬間、凜は出口へと思いきり走り出した。
涙が堰を切ったようにあふれ出す。
怖いとかそういう感情よりも、なぜ悲しいのか、苦しいのかがわからない。
ただ最後に見た二人の悲しげな表情が、脳裏に焼きついて離れなかった。
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