4-11

 いくつかの部屋と庭まである。
 一階建ての小学校のような作りだ。

 街を案内と言っても、ほとんど大通り沿いの店や建物ばかりであったが、凛にとっては新鮮で大興奮することばかりである。
 当初の元の世界へ帰る手がかりを探す、という目的も忘れて歩き回った。

 手がかりといえば、昨日あれからロコに、宙に浮いた黒い穴は知らないか聞いたところ、全く知らないようだった。
 見たこともないらしい。
 簡単には見つからないだろうが、まだ時間はある。

 次にやってきたのは、エマリエルドール街の中心部に位置する場所だった。
 周囲の家々よりも一際大きな建物。
石レンガ造りで正方形をしている。

「ここは?」

「エマリエル卿のお家だよ」

「こんなに堂々とあるんだ……」

 随分オープンな闇の眷属である。
 昨夜ロコにいろいろな話を聞いた。
 人狼(ワーウルフ)は人間を食い殺す。
 ほとんどの人狼は残忍な性格の持ち主で、人間に害をなすのだ。

 この世界メルヴェーユでは、吸血鬼と人狼が太古の昔から争いを続けている。
 どちらの種族が世界を支配するか、という権力争いで人間は二つの種族に挟まれた弱い存在。
 二つの種族の餌でしかなかった。

 しかしアストレーヌ女王は人間と同盟を結んだ。
 ここ百年の間、女王と彼女に従う強いヴァンパイア達によって、人間は守られていたらしい。


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