4-8
「ロコくん……」
その瞳があまりにも苦しそうで、凛は思わず声をかけた。
「次の女王は行方不明らしいから、いつ見つかるかわからない。
まあ、次の女王が人間を守ってくれる人かはわからないんだけど。
でもあの優しい女王の子なら、きっといい人なんじゃないかなって僕は思ってる」
一気にまくしたて、ロコは決意を宿した強い瞳で凛を見つめた。
まさか自分がその女王なんて、しかも女王になる気がないなんて思いもしないロコに、罪悪感が胸を締め付ける。
凛はなんとか話題を反らそうと、視線をそらしながら話を切り替えた。
「そういえば、お父さんとお母さん遅いのね」
ロコははっとして顔を背けると、弱々しい声で無表情に呟いた。
「父さんは人狼に殺された。母さんはつい最近、ヴァンパイアに殺された」
「なっ!」
「前住んでた街がね、人狼に襲われたんだ。母さんは僕を守るために安全な街に行こうって」
ロコは今にも泣き出しそうな程顔を歪めていた。
「ロコくん」
凛は深く考えもせず尋ねた自分を呪い、言うべき言葉が見つからずに唇を噛み締めた。
こんな小さな子供が、こんなにも辛い経験をしている。
それが当たり前にあるのがこの世界なのだ。
「でもね、僕一人でも平気だよ。
母さんがロコは強い子だって言ってたんだ」
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