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 ロコはうつむいてぎゅっと唇をかみ締め、力いっぱい拳を握る。
 凛が肩に手を伸すとロコは顔をあげた。

「どうして?」

「見てのとおりさ。女王が死んでからはヴァンパイアが出るようになった。
今までは世界各地からこの街に移住してくる人がいたけど、もうここは女王に守られた安全な街じゃなくなったんだ」

 凛はぴくりと眉根を寄せる。

「女王って……?」

 乾いて動かない口をゆっくりと湿らせた。

「知ってるでしょ? ヴァンパイア達の王、アストレーヌ女王だよ」

「そ、そうだったっけ……? ごめん、お姉ちゃんあんまり知らないんだ」

 なぜヴァンパイアの女王の名前がこの子から出るんだろう。

「えー知らないの? とっても有名なのに。
あのね、この街はヴァンパイアの女王が住む城にとっても近いらしいんだ。
女王はヴァンパイアだけど、とっても人間に優しい人でね。
僕たち人間の王様と同盟を結んで、人間を襲わない。
人狼からも守るって約束してくれたんだ」

「でも、そんなことしてもヴァンパイアに得はないんじゃない?」

「そんなことないよ。そりゃあ女王の命令を聞かない悪い奴もいるけどさ。
ヴァンパイア達は人狼とずっと争っているから、人間を味方につけたいんだ。
それに、守ってもらう代わりに城に住むヴァンパイア達に血を提供してる」

「それってまさか……」

 生け贄?という考えが脳裏をよぎる。



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