4-5

「そうなの。あの助けてくれてありがとう。あなたの名前は?」

「僕、ロコって言うんだ。お姉ちゃんは?」

 窓から差し込む月明かりが、二人の姿をぼんやりと浮かび上がらせている。
 まんまるの瞳でそう問いかける少年はとても可愛いらしかった。

「私は凛っていうの。ところでさっきのはヴァンパイアなの?」

 すると少年は目を細め、その表情はとたんに険しいものに変わっていった。

「あいつはここ最近この街に現れるようになったヴァンパイアだよ。
毎晩僕たちを殺しに来るんだ。
だからみんな怖がって夜は家から出ないのに、お姉ちゃんはなぜあんなところにいたの?」

 まさか私がヴァンパイア達の女王で、城から逃げてきたんですなんて言えるわけがない。

「えっと……」

 どう言い訳をしようか思いつかずに目が泳ぐ。
 するとロコは、はっと何かを思いついたように言った。

「わかった! お姉ちゃん、この街で暮らそうと思ってきた旅の人でしょ」

「え? ま、まあそんなとこかな」

 何か勘違いしているようだが、とりあえずそういうことにしておくことにした。
「でも……残念だけど、ここももう安全じゃないよ」

[ 66/179 ]

[*prev] [next#]


[表紙へ]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -