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「そうなの。あの助けてくれてありがとう。あなたの名前は?」
「僕、ロコって言うんだ。お姉ちゃんは?」
窓から差し込む月明かりが、二人の姿をぼんやりと浮かび上がらせている。
まんまるの瞳でそう問いかける少年はとても可愛いらしかった。
「私は凛っていうの。ところでさっきのはヴァンパイアなの?」
すると少年は目を細め、その表情はとたんに険しいものに変わっていった。
「あいつはここ最近この街に現れるようになったヴァンパイアだよ。
毎晩僕たちを殺しに来るんだ。
だからみんな怖がって夜は家から出ないのに、お姉ちゃんはなぜあんなところにいたの?」
まさか私がヴァンパイア達の女王で、城から逃げてきたんですなんて言えるわけがない。
「えっと……」
どう言い訳をしようか思いつかずに目が泳ぐ。
するとロコは、はっと何かを思いついたように言った。
「わかった! お姉ちゃん、この街で暮らそうと思ってきた旅の人でしょ」
「え? ま、まあそんなとこかな」
何か勘違いしているようだが、とりあえずそういうことにしておくことにした。
「でも……残念だけど、ここももう安全じゃないよ」
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