4-2
◇ ◇ ◇
街に着くと、まだ街全体が闇に包まれている時刻だった。
日本ほど明るくはないが、家々から漏れ出した小さな弱い明かりが街をほのかに彩っている。
「とりあえず宿屋を探そう、うん」
城から抜け出したはいいが、凜はその後のことを考えてはいなかった。
昔から考えるより先に行動してしまうことが多い性格なのである。
やると決めたら即行動で、後から問題が山積みになったりする。
とりあえずは、この街で元の世界に帰る手がかりを探そう。
ヴァンパイア達は日本に帰らせたくなくて、帰る方法を秘密にしているのかもしれないのだ。
「ないなあ、どうしよう」
宿を探して歩くも街は人の気配がまったくなく、異様なまでの静寂に包まれている。
そのうち、わずかに点いていた家々の明かりも完全に消えてしまった。
唯一残ったのは、凜の持っているランタンの火だけである。
必死に探してまわるが、どの家のドアを叩いてもなんの反応もなかった。
ナイトと一緒だったあの宿もどこにあるかわからない。
自分と同じ人間がたくさんいる街だ、自分を快く迎えてくれるだろう。
そんな凜の思いは、あっけなく打ち砕かれる。
ヴァンパイアが出るという老人の言葉を思い出して身震いをした。
とにかく早く宿を探さなくてはいけない。
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