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◇ ◇ ◇

 街に着くと、まだ街全体が闇に包まれている時刻だった。
 日本ほど明るくはないが、家々から漏れ出した小さな弱い明かりが街をほのかに彩っている。

「とりあえず宿屋を探そう、うん」

 城から抜け出したはいいが、凜はその後のことを考えてはいなかった。
 昔から考えるより先に行動してしまうことが多い性格なのである。
 やると決めたら即行動で、後から問題が山積みになったりする。

 とりあえずは、この街で元の世界に帰る手がかりを探そう。
 ヴァンパイア達は日本に帰らせたくなくて、帰る方法を秘密にしているのかもしれないのだ。

「ないなあ、どうしよう」

 宿を探して歩くも街は人の気配がまったくなく、異様なまでの静寂に包まれている。
 そのうち、わずかに点いていた家々の明かりも完全に消えてしまった。
 唯一残ったのは、凜の持っているランタンの火だけである。

 必死に探してまわるが、どの家のドアを叩いてもなんの反応もなかった。
 ナイトと一緒だったあの宿もどこにあるかわからない。

 自分と同じ人間がたくさんいる街だ、自分を快く迎えてくれるだろう。
 そんな凜の思いは、あっけなく打ち砕かれる。

ヴァンパイアが出るという老人の言葉を思い出して身震いをした。
 とにかく早く宿を探さなくてはいけない。

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