3-45

◇ ◇ ◇


「これでよし、さあ行こ」

 次の日の夜、凛は城から抜け出すことを決めた。
 あれからずっと自室に閉じこもっている。
 分厚い石造りの壁のせいか、しんと静まり返っている。

 夕食の時間になり、侍女のティティーに懇願されて渋々部屋を出たが、食卓には凜一人きり。
 ルジェは自室にこもっていて、残りの三人は出かけているようだった。

◇ ◇ ◇

 自室に戻ると、物音をたてないように注意しながらベッドのシーツを引き剥がし、それを縦に引き裂いたものを結びつける。
 そして長い一本のロープ状にしてベッドの支柱に結び、窓から垂らした。

 城の中には見張りがいる。
 城から抜け出すにはこれしか思いつかなかったのだ。
 分厚い壁のおかげで、幸い物音が廊下に漏れることはほとんどない。
 城の住人のヴァンパイア達も、起き出す前らしく、まだ城の中にいるようだ。

「ヴァンパイアの女王なんてまっぴらよ」

 元の世界には帰れるのかわからない。
 けれど、人間を殺すような生き物の王にはなりたくなかった。
 自分と同じ人間がいるところに行きたい。


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