5-1 揺れる想い
揺れる想い まだ昼だというのに、深い森の上空にある灰色の雲が、太陽の光を遮っていた。
それはまるで森の中心に聳える巨大な漆黒の城を守るかのように、森全体を覆っている。
城のヴァンパイア達は、ちょうど太陽を避けるようにして、城の奥深くに潜んでいる時間帯だ。
相も変わらず宙には大蝙蝠が数羽、大きな羽音をたてて優雅に飛翔している。
彼らは吸血鬼達の伝達手段なのだ。
異世界日本でいう、伝書鳩のようなものだろう。
吸血鬼達は蝙蝠と意思疎通できる能力を持ち、仲間との交信などに利用する。
レヴァンタイユ城に戻り、街で見た蝙蝠が気になっていた凛がアッシュに尋ねると、彼はそう答えたのであった。
大男のヴァンパイアに襲われた日の朝に街の上空を旋回していた蝙蝠は、どうやらアッシュが遣わせたものらしい。
ナイトが凛と一緒に出かけていると知らされはしたが、二人がなかなか戻らないので心配して探してくれていたそうだ。
アッシュとルジェ、グレイズは人狼(ワーウルフ)に攻められていたヴァンパイアの町に、応援として行っていた。
彼らロゼリオンはヴァンパイアの中でも強大な力を持っているため、女王を守ること以外にもこのようなことをすることがあるそうだ。
ただしロゼリオン全員が女王から離れることは滅多にないようである。
[ 119/179 ][*prev] [next#]
[表紙へ]
[しおりを挟む]