3-6
◇ ◇ ◇
青年が出て行った後、凛はしぶしぶ渡された服に着替えていた。
ワンピースのようになっているが、現代日本ではあまり見かけないようなデザインで、麻布の質素な服である。
「なんなのよあいつ、ガキで悪かったわね。目ちゃんとついてんの? 胸くらいちゃんとあるわよ! 顔がよければ何言ってもいいってわけ?」
もう一度会いたいなんて思った自分が馬鹿だった。
あんな失礼なこと言う奴だったなんて、顔に騙された。
しかも胸まで見られてしまった。
まだ誰にも見られたことないのに。
誰かと付き合ったこともない、キスもまだな純潔はいきなり崩れ去ってしまった。
そこまで考えて、なんだか悲しくなってきた。
「それにしてもここはどこなの」
田舎にでも連れてこられたのか、ベッドとテーブルが置いてあるだけの粗末な家。
木造らしく腐食した壁が黒ずんでおり、ベッドも木製でゴツゴツと寝心地が悪そうだ。
コンコン、と扉をノックする音が聞こえた。
あの最低男だろうか。
「入ってもいいかい?」
予想外に聞こえたのは老人の声だった。
先ほどあの男が話していた老人だろう。
「どうぞ」
扉を開くと、質素で変わった服装の老人が入ってきた。
白髪で恰幅の良い、優しそうな顔立ちの老人である。
「気分はどうかね?」
[ 21/179 ][*prev] [next#]
[表紙へ]
[しおりを挟む]