3-4
人物は凜を背負ったまま奥にある階段をあがり、粗末な木製の扉を開ける。
部屋の中央にあるベッドに凛を寝かせた。
凜は僅(わず)かにしか開くことが出来ない瞼(まぶた)で、必死に目を凝らす。
やっとぼんやり見えたのは、やはりあの時に十字路で会い、交差点で助けてくれた美しい青年だった。
黒いジャケットと、同じく黒のパリッとしたズボンを履いている。
こんな貧乏くさい部屋に、彼は不釣合いなほど綺麗だ。
そんなことを考えていると、人物はおもむろに上着を脱ぎ始めた。
「クソッ、嫌な雨だ」
吐き捨てるように言うと黒いジャケットを脱ぎ、肌にべっとりと張りついていたシャツを乱暴に剥ぎ取る。
服の下からは人物のバランスのとれた美しい肢体が現れた。
程よくついた筋肉に、きめ細かな肌。
女性なら誰もが見惚れてしまいそうな肉体だった。
ふと、自分はこんなところにいるのだろうという疑問が浮かぶ。
しかし、少しずつ覚醒してきた意識の中で懸命に状況を理解しようとしても、混乱するばかりである。
あっという間に上半身裸になった人物は、濡れた黒髪をかき上げながら凛のいるベッドへと近づいてきた。
「まさかこんなことをする羽目になるとはな」
青年は顔をしかめながらそう言い、凛のブラウスのボタンを外し始めた。
青年のしなやかな手が無遠慮に凜の胸の辺りを行き来し、不快感と恥ずかしさが凜を支配する。
凜の意志を無視して白いブラウスが開かれると、花柄の下着とまだ成長途中のふくらみが現れ、人物は眉をひそめて一瞬動きを止めた。
「何すんのよこの変態!」
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