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そして横たわったまま凛に向かって手だけを伸ばした。
「アスト様――。何故……来ては下さらないのですか? どうして……」
まっすぐに凛を見つめる卿は、一粒の涙を零して絶命した。
卿が呼吸を終えた後も、暖かいものだけは重力に則って流れていく。
それは狂った化け物が垣間見せた、優しくも悲しい涙だった。
「エマリエル・レヴラー……」
凛は睫毛を伏せて彼の名を呼ぶ。
その声は風に乗って夜空を舞っていった。
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