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「ナイトッ! なっ……!」

 そのままナイトは、凛の頬に口づけした。
 否、凛の傷口から流れる血液を口に含んでいるのだった。
 肩を抱かれ、彼の方へと引き寄せられる。
 心臓が飛び出そうなほど驚いた後、今度は顔どころか全身が真っ赤に染まる。
 頬に彼の甘い唇と息遣いを感じ、脳髄まで溶けてしまいそうだ。
 微かに触れる牙が甘い痺れを誘発する。
 不快感というよりは、言いようのない恥ずかしさが凛の心を支配していた。

「んっ……!」

 ねっとりと舌の這う感覚に、凛は身震いした。
 力の抜ける体で精一杯抵抗するが、彼の瞳は瞳孔が開き恍惚に輝いている。
 まるで獲物を前にした獣のようだ。

「――ナイト?」

 彼はゆっくりと凛から顔を離すと、袖で口元の血を拭った。

「お前本当に身体と違って血は美味いな」

「悪かったわね!」

 そう言ってナイトは、口の端を吊り上げて微笑した。
 ナイトの手の甲に浮き出た血管が、意思を持っているかのように蠢いているのに凛は気がついた。
 ナイトは満足げに両手を握り締めると、大きく跳躍していったのだった。

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