5-49
◇ ◇ ◇
戦いは続いていた。
凛が視線をやると、グレイズはエマリエル卿に肩を切り裂かれてうめき声をあげた。
いつの間にかあたりには、大勢のヴァンピルが集まってきている。
「まだこんなに残っていたのか! 凛ちゃんの血に誘われて集まってきたな」
アッシュは憎憎しげに吐き捨てる。
しかしその声は凛に届かなかった。
アッシュとルジェはヴァンピルを退治するので精一杯だ。
「みんな!」
「説明している時間は無いな」
ナイトはそう呟くと、自らの首筋に爪をつき立てた。
「ナイト!?」
みるみるあふれ出した血を掬い取って親指に絡めとった。
困惑していると凛の唇を、ナイトの指がそっとなぞっていく。
「なっ――」
まるで口紅を引いたかのように真っ赤に染まった唇に熱を感じた。
わずかに口に含まれた彼の血は、まるで砂糖菓子のようにとても甘かった。
不思議と鉄の匂いが鼻腔をくすぐる。
[ 167/179 ][*prev] [next#]
[表紙へ]
[しおりを挟む]