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◇ ◇ ◇


 戦いは続いていた。
 凛が視線をやると、グレイズはエマリエル卿に肩を切り裂かれてうめき声をあげた。
 いつの間にかあたりには、大勢のヴァンピルが集まってきている。

「まだこんなに残っていたのか! 凛ちゃんの血に誘われて集まってきたな」

 アッシュは憎憎しげに吐き捨てる。
 しかしその声は凛に届かなかった。
 アッシュとルジェはヴァンピルを退治するので精一杯だ。

「みんな!」

「説明している時間は無いな」

 ナイトはそう呟くと、自らの首筋に爪をつき立てた。

「ナイト!?」

 みるみるあふれ出した血を掬い取って親指に絡めとった。
 困惑していると凛の唇を、ナイトの指がそっとなぞっていく。

「なっ――」

 まるで口紅を引いたかのように真っ赤に染まった唇に熱を感じた。
 わずかに口に含まれた彼の血は、まるで砂糖菓子のようにとても甘かった。
 不思議と鉄の匂いが鼻腔をくすぐる。

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