5-42
「ロコ! ご、ごめんなさい! 私、私ね本当はヴァンパイア達の――」
「――知ってるよ、とっくに。あんなでかい声で気づかないわけ、ないだろ。
僕はお姉ちゃんを、信じられなかった……ごめん」
「ううん、私こそ……」
「僕ね、本当はずっとお姉ちゃんと……一緒にいたかったんだよ」
「私だって、私もずっとロコと一緒に居たかったんだから!」
あっという間に瞳一杯に溜まった大粒の涙が頬を滑り落ちる。
涙でロコの顔が見えないのを、必死に拭いながら目を開こうとした。
「見たかったなあ。お姉ちゃんが……王……になるの。きっと幸せな世界を――」
作ってね、と唇だけが紡いだ気がした。
「うん、約束する。 絶対に。ゆびきりげんまんしよう?」
もう自力で動かすことのできないロコの手を持ち上げ、自分の指を絡ませた。
「――」
ロコはにっこりと満面の笑みを浮かべると、静かに目を閉じのだった。
「ロコ! ロコっ! いやあああっ!」
凛にはどうしてもロコの指を離せなかった。
もう二度と動かないロコの胸に顔を埋めて、凛は泣き崩れた。
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