2-10
ぶつかる、そう思った時ふわりと身体が浮いたようだった。
来るはずの衝撃が来ず恐る恐る目を開けてみると、あの青年の顔が凜の瞳に映る。
凛と女の子は、青年の腕の中に抱かれていたのだ。
どうやら間一髪のところで青年に助けられたらしい。
急ブレーキを踏んだのか、大型トラックが横倒しになって道路を塞(ふさ)いでいた。
凛はそっと女の子を抱いていた腕を離す。
「ママ! ママー!」
女の子はその場にぺたんと座りこむと、大声で泣き崩れ、凜は今頃助かったという嬉しさがこみ上げてきた。
「あの、ありが……」
「やっと見つけた、我が君(ロゼット)」
青の瞳に驚きをたたえた青年が、凜の言葉を遮(さえぎ)った。
「へっ?」
凜はきょとんと青年を見返すが、答えが見つからないうちに青年は凛を抱いたまま立ち上がる。
そして、いつの間にか二人のすぐ側の空間に現れた、漆黒の大きな穴へと飛び込んでいったのだった。
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