6-3

「アストレーヌ前女王の血に狂ったのでしょう。女王の血は格別だと言いますからね。
またその味を味わって見たくて、手当たり次第人間を襲っていたのでしょう」

 グレイズは微笑みながら言う。

「ううん。きっとエマリエル卿は、アストレーヌ女王のことが好きだったんだよ」

「はあ? 何をいきなり言い出すんだ馬鹿女」

 ルジェが不機嫌に睨みつける。

「彼は、アストレーヌ女王が死んだなんて信じられなかった。ううん、信じたくなかった。だから城に近いこの街で叛乱を起こしたのよ」

「だからそれが何だと言うんだ?」

 ルジェに反抗するのをやめた凛は、声を強くして叫んだ。

「そうしたらアストレーヌ女王が、自分に会いに来てくれると思ったから! だから彼は最後に、何故来てはくれないのかって言ったのよ!」

 エマリエル卿が最後に自分に向けた表情を覚えている。
 それは悔しさ恨みでもなく、悲しい瞳だったのである。

 アストレーヌ女王が亡くなった事で、多くの人の人生が狂わされた。
 彼もその一人なのかもしれない。

「そうかもな」

 ルジェの傍らで、ナイトが悲しげに微笑した。



 凛はロコの眠る山に視線を移して息を肺一杯に吸いこんだ。

「ロコ、約束するわ。私、女王になる! そしてきっとここを幸せな世界にしてみせる! 見てて」

 そう叫ぶとにっこり微笑み、

「行きましょ!」

 ロゼリオン達を振り返ってもう一度笑ったのだった。

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