2-9
「凛! だめっ!」
「君、危ないよ! いっちゃいかん」
通行人の言葉も耳に入らず一直線に子供の元へ走る。
女の子は道路の真ん中まで行くと、怖くなったのか顔を歪ませて泣き出した。
「じっとしてて、今お姉ちゃんが助けに行くからね」
車の騒音で聞こえるともわからない言葉を必死で叫んだ。
たった数メートルの距離が長く感じられる。
女の子の元へ着くと腕に抱えて立ち上がろうとするが、その時にはトラックが凛達目掛けて走ってきていた。
逃げようとするも恐怖で身体が動かない。
目を瞑(つむ)り子供の身体を抱きしめながら、せめてこの子だけでも助かるようにと祈った。
――首すじが熱い。
瞬間、蕾形の痣が鮮やかな薔薇の花へと姿を変え、深紅の光を放ちはじめる。
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