5-35
◇ ◇ ◇
あれからすぐに馬を走らせ、ロゼリオン達と凛はレヴァンタイユ城を後にした。
アッシュの後ろに乗って、凛はロコが無事であるように祈ることしかできない。
城を出る直前に、ナイトから渡された護身用の銀の短剣(レイピア)を片手に、震える手を強く握りこんだ。
レヴァンタイユ城を囲う森を抜けるとすぐにエマリエルドールの街が見えてくる。
――それは異様な光景だった。
街全体から黒煙がもうもうと立ち上り、至る所で火柱が噴き出している。
「なんなのこれは――いやああっ!!」
街にたどり着いた凛は、闇を引き裂くように絶叫した。
馬を全速力で走らせてやっと街にたどり着くと、街にはあの賑やかな光景が微塵も存在していなかった。
血に塗れた人間が無数に折り重なって倒れ、牙をむき出しにした何十人ものヴァンピルが人間達を襲っている。
街には錆びた鉄の臭いと肉の焼ける臭い、そして煙とか混ざり合って異臭が立ち込めていた。
「早速大歓迎かよ!」
凛達の後方から一人のヴァンピルが突然姿を現し、長剣を振り上げた
る。
アッシュはにやりと微笑むと、目にも留まらぬ速さで携えた長剣を抜き取り、ヴァンピルの一撃を刃で受け止める。
それはヴァンパイアというよりは獣のようで、牙をむき出しにしてびっしりと体中に黒い体毛が生えた怪物であった。
「きゃああ!」
頭を抱えて伏せた凛に、刃がぶつかり合う耳障りな音が聞こえた。
アッシュは剣をはじき返すと、瞬時に斬りつける。
怪物は胸から血しぶきをあげて倒れた。
「まあざっとこんなもんかな」
アッシュは言うが早いか、突進してきたもう一匹のヴァンピルを薙ぎ払った。
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