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「何とか言ってよみんな! 街にはたくさんの人達がいるのよ!? みんな殺されちゃう……ロコもベクさんも……」
唇をかみ締めて拳を強く握りしめた。
泣きたいのを精一杯こらえて叫ぶが、今すぐにでも地面に突っ伏して、喚きたい気分だった。
ルジェはそんな凜に、汚いものでも見るかのように冷ややかな視線を浴びせる。
「いずれこうなることを分かっいて、お前は街から逃げてきたんだろう!? あの街にいれば、あのガキもいずれ殺される。そう分かっていてお前はあのガキを置いてきたんだろうが」
「まあまあルジェ」
グレイズの静止を無視して犬歯をむき出しながら怒鳴りつけるルジェに、凜ははっとした。
「けれど、だって……じゃあどうすれば――」
そう、最低なのは自分だった。
ロコが殺されるのを分かっていて、あの街に置いてきた。
心のどこかで、どうせ日本に帰ってしまえば関係ないと、思っていたのかもしれない。
涙が堰を切ったように溢れ出した。
「助ける方法は一つだけある」
ルジェはちっと舌打ちすると、急に碧の瞳に真摯を込めて呟いた。
「教えてルジェ! お願い」
「お前が女王になって僕達に命令しろ、人間を助けろってな。今ここで女王になると誓え」
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