5-28

◇ ◇ ◇

 イライザに送られて黒い薔薇が咲く中庭を通ると、ちょうどナイトが向こう側からやって来るところだった。
 ナイトがいれば安心だ。
 凛はほっとしてイライザに例を言うと、彼女は軽く一礼をして去っていった。

 もう外はすっかり日が暮れて、夜空には星がきらりと輝いている。

「ナイト!」

 中庭の中央まで歩いていくと、ナイトに駆け寄った。

「お前、何故ここにいる」

「え? ちょっと道に迷っちゃって……」

 呼び方がお前に戻っている。
 あの時一度だけ名前で呼ばれた気がしたが、気のせいだったのだろうか。
 僅かに吹き込む冷たい風が、ナイトの漆黒の髪を揺らしていった。

「そうか」

「ナイトこそ今までどこに行ってたの?」

「お前には関係のないことだろう」

「そうだけど」

 無機質に響く低い声に、自分を拒否されて心が鉛に変わったように重くなる。

「丁度いい、お前に聞きたいことがある」

 ナイトの透き通った青い瞳に見つめられれば、凛の心臓がトクンと鳴った。

「何?」

「お前、あの時どうして俺を庇った? お前のように非力な奴が居たってどうしようもないのは分かっていたはずだろう? 何故俺を助けにきたんだ、女王として有るまじき行為だぞ」

 ナイトの言わんとすることをつかみかねて、一瞬思案し、すうっと大きく息を吸った。

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テーマ「人外ファンタジー」
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