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「それって、どうして――」
ヴァンパイア達の女王である彼女がそんなことを思ったのだろう。
アストレーヌ女王とは一体どんな人だったのだろうか。
「そう、それは決して簡単な道ではなかった。ヴァンパイア達を従わせるのに十年かかったわ。
それまで人間なんて虫ケラ同然としか思っていなかった人達ですもの、そう簡単には、ね。もちろん今でも、そう思っているヴァンパイアの方が多いくらいですわ」
「でもすごいじゃないですか! みんなの考えを変えたんですよ?」
志は半ばにして終わったが、思想は受け継がれている。
そう言う凛を睨みつけたイライザは、憎々しげしげに吐き捨てた。
「変えたわけじゃありませんわ。我等は女王に忠実な種族。次の女王が人間を殺せと言えば殺すのです」
「そんな」
凛は思わず口をつぐんだ。
そんな凛の様子を見て、イライザはまた口元に微笑みを戻すと言った。
「こんな暗いお話しを聞かせてしまってごめんなさいね、女王様。さあお部屋へ戻りましょう」
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