5-23
◇ ◇ ◇
気づいたらもう夕暮れ時になっていた。
ロコと別れてからまだ一日も経っていないのだと思うと、なんだか不思議な感じがした。
もう気が遠くなるほど前だと感じるというのにだ
。
あんなに泣いたのは久しぶりだった。
ティティーに慰めてもらいながら号泣したのでまだ目が赤い。
彼女はというと、黙って凜に付き合ってくれていたのだった。
日本にいた時に柚衣(ゆえ)の胸の中で号泣したのを思い出す。
ティティーは柚衣の代わりにはなれないし、また代わりとも思っていなかったけれど、二人にはなぜか同じものを感じる。
凜が泣き止んだのを見て、ティティーは侍女の仕事に戻っていった。
しばらくしてトイレに行きたくなったのだが、未だに場所がわからない。
散々相手にしてもらったので、また迷惑をかけるのは心苦しく、一人で部屋を出たのだった。
「ああもう! トイレはどこなのよー? 不便すぎる」
そして案の定道に迷っていたのだった。
どこもかしこも真っ黒な石壁に燭台で区別がつかないのも不便でならない。
廊下にいるのは確かだが、どこの廊下なのか全くわからなかった。
「誰かー! いませんか? 助けてください」
ヴァンパイア達はまだ寝ているのだろう。
誰ともすれ違わない。
「あら、その声は凜女王様じゃございませんこと?」
瞬間、救いの神がやってきたような声に、凜はぱあっと笑顔になって振り向いた。
「よかった実は――あ」
思ったのもつかの間、見覚えのある声の主に気づいて声を詰まらせる。
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