5-14

 未だ呆然と立ち尽くしてうつむく凛の頭部に、アッシュの手が伸びてきた。

「わひゃっ?!」

 叩かれる、そう思って身構えたのだが、予想に反してわしゃわしゃと撫でられ、驚きのあまりに変な声が出た。

「おーい、元気だせ元気! イェゼンが裏切ったって聞いて、二人とも気が立ってるだけさ」

「でも……」

 まったくその場の空気を読まない、アッシュの晴れやかな笑顔に驚くが、すぐに表情を曇らせて呟く。
 どうして人を怒らせてしまうようなことを言ってしまうんだろう。
 ふいにロコのことを思い出して瞳が潤む。

「ああーもう! 考えるのよそうぜ。女の子は笑ってる顔が一番可愛いよ?」

「きゃっ、何っ」

 いつの間にか頬に流れていた涙を、アッシュの長い指が乱暴に拭った。
 銀色の髪がさらりとアッシュの首に流れるのがとても魅力的で、凛を覗き込む初めて間近で見る金の瞳に吸い込まれそうで、凛は真っ赤になって視線を反らす。
 お互いの体は、体温が触れ合うほどに近づいていた。

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