2-6
家につく頃には、燃えるように赤い夕日に照らされた街が赤く染まっていた。
凛の家の外壁は、元は白色だっただろうが、今は風雨に晒(さら)されて少し黄ばんでいる。
年期を感じる外観の家も、玄関先にはさまざまな植木が置かれており、手入れの行き届いた様子である。
「ただいまー」
玄関のドアを開け、いつもの調子で声をかける。
靴を脱ぎ家の中へ入ると、台所からかすかに晩御飯の匂いが漂ってくる。
一日の疲れを忘れ、心がほぐれていくような幸せな時間だった。
「おかえり、お風呂沸いているよ。先に入りなさいな」
「はーい、おばあちゃん」
台所から出てきたのは、優しそうな顔をした白髪の老人だった。
両親は凜が幼いころに亡くなったと祖母から聞いている。
それから唯一の親戚である祖父母に引きとられたのだ。
過去にはそれが元でいじめにあったりもしたのだが、今は良き理解者であり友達がいる。
両親に変わって優しく時に厳しく育ててくれた祖父母と一緒の今の暮らしが、凜はとても好きだった。
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