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「ここからが本題です。力の弱い者ほど反逆する者も多いのですが、強い者、特にイェゼンは女王に絶対の忠誠を誓っています。
先代女王は私達に人間を殺すなと命じました。先代亡き後も、新たなる女王が立たないかぎりその誓いを守らなければなりません」
「なんで守らなきゃいけないの?」
「理由などありません。私達は太古の昔から女王に仕えてきたからです。そうして確固たる絆をもってしてワーウルフと戦ってきたのです。
現に今までイェゼンが女王に逆らったなど一度も聞いたことがありません」
しかしナイトを超える者はイェゼンである他なく、誰かが女王に逆らって人間を殺しているとしか考えられないのだ、とグレイズは続けた。
「今まで王座がこんな長期間空いたことはなかったからな。それだけ女王の支配力が弱まっているということか。これは忌々しき事態だ」
ルジェ苦虫を噛み潰したように顔を顰める。
「弱まるとどうなるの?」
「まずこれまで女王の名の下に団結していたヴァンパイア達が、無差別に人間を殺すようになります。人間の大半は滅ぶでしょう。
そして統率が取れなくなった私達は、ワーウルフの格好の餌食。ここぞとばかりに攻め入られて滅亡ということになるかもしれません」
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