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それから凜は、本当は自分が城から抜け出したこと、ナイトがずっと守っていてくれたこと全てを伝えた。
凜の血を舐めたことで傷が治ったことは隠しておこうと思ったが、上手い言い訳が思いつかず結局バレてしまった。
大男のヴァンパイアに、彼が傷を負わされたことを伝えると、三人は信じられないといった表情になり、最後まで話し終えた時には、三人とも何かを深く考え込んでいるようであった。
「あの、迷惑かけて本当にごめんなさい」
城を抜け出して迷惑かけた上に、ナイトにまで怪我をさせてしまったのである。
三人からは当然怒りの声があげると思っていたのだが、アッシュからは予想外の言葉が発せられた。
眉根を寄せて唇を噛んだアッシュは、乾いた声で呟く。
「まさか、あのナイトが負けるなんて……。嘘、だろ? その大男は何者なんだ?」
「ナイトレイに勝てる者なんてそうそういませんよ。それに女王の血にそんな効果があったのですね」
グレイズも続けて信じられないといった表情をしている。
「おい女、嘘をついてるんじゃないだろうな?」
「嘘なんてつくわけないじゃない! 全部本当のことなんだから。それに、ナイトってそんなに強いの?」
ルジェが睨んでくるので、凜は声を荒くして叫んだ。
確かに人間の真似できるような戦いではなかったが、大男にまったく歯が立たなかったナイトが、皆が言うほど強いとは思えない。
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