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「もう止せよルジェ、お前血が足りないからイライラするんじゃないのか? さっさと城へ帰ろうぜ」
アッシュがルジェを叱り付ける。
「城……?」
うつむいて考えを巡らせていた凛には、自身の背後でいつの間にか目を覚ましたロコが、上半身を起こしていたことに気づかなかった。
「ロコ!」
大丈夫? とロコの元へ駆け寄ろうとするが、それを制するように彼は敵意の篭った視線を投げつけてきたのだった。
「近づくな! お前らヴァンパイアだな?」
「だからどうしたと言うんだ?虫ケラ風情が、僕達に偉そうな口を聞くな」
冷ややかな視線を浴びせたのはルジェである。
「ロコあのね、私大事な話が……」
どこから聞いていたのだろう。
どちらにせよ最悪な形で知られてしまった。
精一杯ロコに説明しようと言葉を紡ぐ。
しかしその心はロコに届いてはいなかった。
「うるさい! お前もヴァンパイアだったのか?」
凛を震える手で指差すロコには、もはや絶望の色しか浮かんでいない。
ヴァンパイアかそうでないかと聞かれれば、ヴァンパイアなのだろう。
凛にはもう自分が人間だという自信が持てないでいた。
「うん、黙って本当にごめんなさい。だけど」
「信じていたのに、僕を騙していたんだな! 今までのことも、全部僕を騙すための芝居だったのか? 何を企んでいるんだ!?」
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