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 ――しかしそれは静寂を破って現れた。
 城の最奥、一際豪華な装飾が施された一室の扉が開き、中から数人の男達が出てきたのである。

 手に明かりと、何やら大きな荷物を抱えた男達は、酷く怯えながら注意深く辺りを窺(うかが)っているようだ。

「まだ例のものが見つかりません」

「仕方がない、さっさとここを出るんだ」

 周りの男達は頷くと足早に廊下を去っていく。
 下り階段に差し掛かかり慎重に荷物を運んでいく。
 瞬間、振動によって荷物を覆っている布が解け、中からこの世のものとは思えぬ程美しい女性が現れた。

 くっきりとした整った顔立ちに、石膏のような白い肌。
 薔薇のように赤く艶やかな唇。
 長い睫(まつげ)は伏せられているが、その奥の瞳が美しいだろうと容易に想像できてしまう。
 その透き通るように白い首筋には、真っ赤な薔薇の花形の痣があった。

 女はまるで人形であるかのように弱々しく、頬を伝う涙だけが女が生きていることを知らせていた。

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