1-2
――しかしそれは静寂を破って現れた。
城の最奥、一際豪華な装飾が施された一室の扉が開き、中から数人の男達が出てきたのである。
手に明かりと、何やら大きな荷物を抱えた男達は、酷く怯えながら注意深く辺りを窺(うかが)っているようだ。
「まだ例のものが見つかりません」
「仕方がない、さっさとここを出るんだ」
周りの男達は頷くと足早に廊下を去っていく。
下り階段に差し掛かかり慎重に荷物を運んでいく。
瞬間、振動によって荷物を覆っている布が解け、中からこの世のものとは思えぬ程美しい女性が現れた。
くっきりとした整った顔立ちに、石膏のような白い肌。
薔薇のように赤く艶やかな唇。
長い睫(まつげ)は伏せられているが、その奥の瞳が美しいだろうと容易に想像できてしまう。
その透き通るように白い首筋には、真っ赤な薔薇の花形の痣があった。
女はまるで人形であるかのように弱々しく、頬を伝う涙だけが女が生きていることを知らせていた。
[ 5/179 ][*prev] [next#]
[表紙へ]
[しおりを挟む]