[ 新生徒会2 ]


「ごめん!遅れちゃった!」

息を切らせ現れたのはカーミラともう一人、明るい青髪の大人しそうな少年だった。

「先輩遅いですよ!」
「ホントにごめんね…迎えに行こうとしたらすれ違っちゃって」
「ちゃんと打ち合わせしておいて下さいね……さあ、ソファにどうぞ」

リデルが椅子を勧めるが少年はカーミラの後ろから出てこない。背中からじっと部屋の様子を伺っていた。

「あー…ちょっと人見知りする子でさ」
「アリスと一緒ですね。この子の方が可愛いですけど」
「……リデルは僕に喧嘩売ってるのかな?」

キッとリデルを睨み付けるアリスに少年は怯えたが、柔和な笑顔を浮かべたリデルに優しく促されちょこんとソファの端に腰掛けた。

「よし、全員揃ったな!」
「うわっ!か、会長…?!何処にいたんですか…」
「私は神出鬼没なのだよ。さあそれより茶を出したまえ。顔合わせを始めるぞ」

役員が揃った所で何処からともなくウサギの縫いぐるみが現れ、乙木の膝上に収まった。驚く新役員をよそに、リデルは苦笑を浮かべながら紅茶の用意をし、他の役員も気にせず会長に声を掛ける。

「今日くらい普通に出てきたらどうなんです?」
「雨英くん驚いちゃったみたい。よしよし…」
「役員やるならこれくらい馴れなきゃダメじゃない?」
「あとこの横柄さにね」
「乙木…顔合わせ前に一回校舎裏に行くか?」
「はいはい、冗談はその辺にしておいてくださいね」

各人の前にカップが置かれ、ようやく顔合わせが始まった。乙木の膝に座ったまま、会長が旧役員を紹介していく。

「知ってはいるだろうが、改めて紹介しよう。まずは私、会長の宇佐木だ。そして副会長の乙木。名前で分かるだろうが、彼はただの人間だ。そして庶務のリデルと監査のアリス。我々は引き継ぎ役員として共に働く。よろしくな」

会長の言葉に合わせてペコリと互いに挨拶する。
そして次にフェニとカーミラが自分の後継を仲間に紹介した。

「次の会計を任せる津雲だ。特別クラスにいた奴だから知らないと思うが、まあ………仕事は出来る奴だ」
「その間は何かな、フェニ?ちゃんと紹介してくれないとこれから仕事しにくいじゃないか」
「これでも良く言ったんだが」
「全くもう〜…フェニの言うことは気にしないでね?これからよろしく」

ニコニコと笑う津雲と対称的に新しい書記、雨英は俯いたまま、なかなか顔を上げなかった。

「書記をやってもらう雪ん子の雨英くんだよ。ちょっと照れ屋なんだけど、字がすごいキレイだし、仕事も丁寧なんだ。だから図書委員から引き抜いてきちゃった」
「よ、よろしく……お願い…します…」

ぽそぽそと呟いた時、ようやく顔を上げた。やや潤んだ幼い瞳が前髪から覗く。

「よろしくね、雨英くん」
「今は…一年生でしたっけ?」
「は、はい…」
「うわあ、本当?気をつけなよ?リデル年下好きの獣だから…っいひゃい!」
「余計なことは言わなくていいよ」

横から冷やかすアリスの頬をリデルがつねる。
一つ小さな溜め息を溢し、乙木がそれを宥めた。

「リデル、アリス…雨英くんがビックリしてるからやめようね…」
「しゃきにいっひゃのリれルらし!」
「あれ?僕何か言った?」
「さっき言った!」
「あーもー分かったから!喧嘩両成敗」

わいのわいのと騒いでいると緊張していた雨英の表情がふわりと和らいだ。

「ふふっ……皆さん…面白いです…」
「これからは雨英くんも僕らと一緒だよ?」
「…!」
「そうそう、リデルの牙からは僕が守ってあげるし」
「まだ言いますか」
「はい…!…が、頑張ります…!」

雨英も徐々に心を開いていった。

――こうして新旧役員の顔合わせは無事に成功。
新しい体制が着々と整っていくのだった。

(2011.7.6)

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