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始めから解りきっていたことだった。
生徒と教員が、結ばれることなど、どう考えたってありえない。教師としてやってはいけないこと、越えてはいけない一線。
頭では、解っていたのに、愚かにも私は、好きになってしまった。
地下に住む、大きな蝙蝠のような薬学教授を。
最後だから良いよね。
いつもお世話になっているから良いよね。
そう言い聞かせ、自己の行為を正当化させる。
この行為はいたってお世話になった恩師への感謝の印である、そんな装いであげればいい。怪訝そうな顔をされたら日本では、恋人や好きな人以外にお世話になった人や友達にあげるのが一般的と理屈をこねればい。
私だって最初から、先生に慕情を抱いていたわけではない。薬学が好きだったから、先生と親交はあった。その時はただ先生として尊敬し慕っていた。
監督生として責任ある立場におかれていた時、仕事や勉強、進路について悩んでいた。
糸口の見えない不安、押し潰されそうな責任、下級生の模範とならなければといつも心休まる暇もなく緊張していた。
そして、誰にも弱みを見せられなかった。
その頃の私は、よく寮を抜け出し、学校の一番高いところに登り、夜空を眺めていた。
月と星達が見守る中で、一人泣いていた。
この空はどこまでも続いている。
何万キロと離れた、懐かしい日本へとも。
この空は途切れることなく、日本へ繋がってる。
そう思うと、どんな日本縁の品を見ているよりも、この空を見た方が日本へ近いような気がした。
いつの間にかそこだけでしか泣けなくなった。
ハラリ、ヒラリと舞い散る雪。
そんな寒い日も泣いていた。
心はぐちゃぐちゃで、切ないのだが、悲しいのか、辛いのか解らなかった。
ただ苦痛だった。荷が重かった。思考する頭が煩わしかった。
ふと下を見れば、暗い口がぽっかり、そこに白いものが幾つも幾つも吸い込まれていく。
嗚呼、私も吸い込まれていったら、そこに楽園はあるのだろうか。
ただ、休む暇なく永遠と繰替えす思考という支配から自由になりたかった。
そんな、自墜願望が支配する中だった。
「死ぬ気か?」
男の深みのある声が闇に響く。その声は、飛び降りてしまいそうな人間がそこにいるわりに、至って冷静で、丸でここで私が一種の狂気を演じてもきっと彼は傍観者を貫くかのようだった。
−−スネイプ教授ー−
驚きのあまり目を見開く、嫌な人に見つかった。
はあっと一つ溜息を零す。
スネイプなどに見つかっては減点は確実だろう。
そして、声のする方をゆっくりとした動作でふりめけば、案の定、闇が広がるだけで、その姿は解らなかった。
先生から見た私の顔はきっと酷くぐちゃぐちゃだろうな。
「レイブンクローから減点しますか?」
そう問を投げても返ってくることはない。
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mokuji