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北の奥殿にある簡易台所−−といっても簡易なわりに設備はちゃんとしている−−では、甘いチョコレートの匂いで充満していた。

溶けたチョコレートがボールの中で溶け合い、絡みあって行く。
そんな作業を名前は遂行し、傍らでルキアはメレンゲ作りに格闘していた。

ことり、名前はゴムベラを置き、頭に手をやる。


「ルキアちゃん、ごめんなさい。少し休んでいい?」


バレンタインのプレゼントを作っている最中から、いや、朝から少し体調の悪そうな名前だった。連日の寒さや先日の遠出、連夜ひそかに縫っていた白哉への小袖、ついに体力の限界だった。

朝方、白哉にも顔色の悪さを指摘されていた。
この時期、白哉は緋真の命日も近いことから、名前の体調を、神経質なほど気にしていた。どうやら、彼にとってこの時期は、一種のトラウマのようで、また自分を置いて愛しく大切な人が逝ってしまうのではと、脅迫観念じみたものに追われていた。

名前はそういった白哉の心理を痛い程解っているから、考え過ぎですよと心配さないために言った。

確かににその時は、そうでもなかった。

少しでも、そんなそぶりを見せたら、彼は隊舎に行かず自分の傍を離れなかったろう。
そしたら、ルキアと一緒に作るはずだった、ガトーショコラが作れなくなってしまう。


作っている最中、徐々に体温が上がっていき、頭が頭痛とぼーっとしてくる感覚に襲われていった。

そして遂に立っていられない程に、頭痛がしてきた。


「姉様!!大丈夫ですか?」

ルキアは慌てた。白哉には、心配いらないと言っていたが、内心ルキアは、本当は辛いのではと思っていた。
自分に気を使って、無理してしまったのかと、罪悪感に苛まれる。

「ごめんなさい。さっきは大丈夫だったのだけど、急に。本当、役立たずでごめんなさい。一応、チョコとバターは一緒にしたのだけど」

名前は力無く微笑みながら言った。それがまた辛そうであった。

ルキアは、ボールの中身を確認する。やはり、日頃、和菓子を作っている所為か、なんら問題はなかった。

「大丈夫です、無理しないでください。あとは私が」

「本当にごめんなさい」

名前はそういうと、いつの間にかきた侍女と一緒に部屋へと下がっていった。

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mokuji



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