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2
北の奥殿にある簡易台所−−といっても簡易なわりに設備はちゃんとしている−−では、甘いチョコレートの匂いで充満していた。
溶けたチョコレートがボールの中で溶け合い、絡みあって行く。
そんな作業を名前は遂行し、傍らでルキアはメレンゲ作りに格闘していた。
ことり、名前はゴムベラを置き、頭に手をやる。
「ルキアちゃん、ごめんなさい。少し休んでいい?」
バレンタインのプレゼントを作っている最中から、いや、朝から少し体調の悪そうな名前だった。連日の寒さや先日の遠出、連夜ひそかに縫っていた白哉への小袖、ついに体力の限界だった。
朝方、白哉にも顔色の悪さを指摘されていた。
この時期、白哉は緋真の命日も近いことから、名前の体調を、神経質なほど気にしていた。どうやら、彼にとってこの時期は、一種のトラウマのようで、また自分を置いて愛しく大切な人が逝ってしまうのではと、脅迫観念じみたものに追われていた。
名前はそういった白哉の心理を痛い程解っているから、考え過ぎですよと心配さないために言った。
確かににその時は、そうでもなかった。
少しでも、そんなそぶりを見せたら、彼は隊舎に行かず自分の傍を離れなかったろう。
そしたら、ルキアと一緒に作るはずだった、ガトーショコラが作れなくなってしまう。
作っている最中、徐々に体温が上がっていき、頭が頭痛とぼーっとしてくる感覚に襲われていった。
そして遂に立っていられない程に、頭痛がしてきた。
「姉様!!大丈夫ですか?」
ルキアは慌てた。白哉には、心配いらないと言っていたが、内心ルキアは、本当は辛いのではと思っていた。
自分に気を使って、無理してしまったのかと、罪悪感に苛まれる。
「ごめんなさい。さっきは大丈夫だったのだけど、急に。本当、役立たずでごめんなさい。一応、チョコとバターは一緒にしたのだけど」
名前は力無く微笑みながら言った。それがまた辛そうであった。
ルキアは、ボールの中身を確認する。やはり、日頃、和菓子を作っている所為か、なんら問題はなかった。
「大丈夫です、無理しないでください。あとは私が」
「本当にごめんなさい」
名前はそういうと、いつの間にかきた侍女と一緒に部屋へと下がっていった。
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mokuji