24Q 7
 お好み焼き屋を出て、一同は「次は決勝リーグだ」と意気込む。
 その輪の中にあって、白美は一人端正な作り笑いを浮かべていた。

 頭の中には、高尾の質問が去来していた。

――「どうしてそんなバスケをするのか」。

 「普通にプレイすればいいのに、どうしてお前はそうなのか」

 幾度そう問われてきただろう、白美は息を吐く。

 バスケをしたいという欲求に身を任せても、試合中の高揚感に身を任せても。
 
――それは目の前に立ち塞がって。

 だから、後ろを向くしかないのだ。
 そうしなくては勝てないから。どこにも行けないから。
 勝つためには。

 息が詰まって呼吸が苦しい、白美が俯き気味に眉間を寄せたその時だった。

「犬!?」

 突然耳に入って来た大声に、白美は引き戻された。
 ぼうっと立っていた白美は、周囲から遅れて黒子の手に抱かれたそれに気が付く。
 黒と白の、犬。

「わァ、犬だァ……」

 思わず素を零し、我に返って周囲の喧騒に雑じった。騒ぐ一同を注意しながら店から出てきたリコが、一転犬の可愛さにやられはしゃぐ姿を微笑ましく見つめる。

 ところで。

「なんか……誰かに似てない?」

 沈黙の中、白美は黒子と犬を見比べて。

――テツヤ二号。

 その後、火神が犬が苦手というびっくりな事実が明らかになったりして。

 笑い声の中で、白美は少しだけ胸が軽くなった気がして、微かに頬を綻ばせた。


「もふもふって、癒しだよね」

「……橙野くんが動物好きだったとは知りませんでした」

(I felt better thanks to him.)

*前

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