10:おまけ

――――――――

「ゼッ、ゼェッ・・ゼェ、ゼェ」


低い呼吸が途切れ途切れに、スラムの一角に鈍く響いている。開けた所、大量に棄てられた黒焦げの瓦礫と共に半端者の少年が倒れていた。
身体中に火傷を負い、その右足は血塗れ。半開きになった緋色の双眸は力無く、ただ雨の降る曇天を見上げていた。

誰が見てもこのまま放っておけば確実に死ぬと思うだろう状態である。

身体中が痛い。オレはこのまま死ぬんだろうか・・・・そういやアイツは大丈夫だろうか?手とか絶対ェヤベェだろ。折角出来たトモダチだったのになぁ。
体は動かなくとも思考はその回転を緩める素振りは見せない。目に降った雨粒が目尻から流れていく。

「チクショウ、死にたく・・・・ねェ・・・・」


どこからか足音が聞こえた。聞き慣れたそれとは違った硬質な音と水音を響かせて近づいてくる。

カツン、と音が耳元で止んだ。気配を感じてのろのろと目を遣ると、直ぐ側で少女がベルを見下ろしていた。

歳上らしい、スラムに似つかわしくない深紅のドレスを身に纏い、踝まで伸びた金髪を2つに束ねている。褐色な肌と緋い目は自分と同じだ。
不思議な事だが、雨の中に居るにも関わらず彼女の体に雫1つ付いてない。
まるで幻だ、これは夢だろうか。

「あなた、素晴らしく惨めだわ。」

気に食わない形に引かれていた線が小鳥の様に囀ずった。

「そうまでして生きたいの?あなたみたいのに大層な目的が有るとは思えないんだけど。」
「何も出来ないまま死んでいく――――最高に情けないわ」
「でもそれは特別な事じゃないから思い上がっちゃダメなのよ?」

まるで歌詞の如く気に障る事を唱いやがる。反論したいが指一つ動かせない。
うるせェよ、ンなもん何だっていいだろうが。オレはただ、死にたくねェ・・・・!

不意に半端者の少女の耳がピクッ、と動いた。
どうやら最後の思いが無意識の内言葉になってたみたいだ。

――いいわ、あなたに理由を与えてあげる――

今度は向こうから、オレに見えるように顔を寄せる。気に食わない面に拍車を掛けた笑みでその両手でオレの右手を優しく、厳かに包み込む。
握り返したのは肯定の証だったのか。


「我らが父の為、共に祈りましょう。」


-END-




/
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -