自分よりも小さなガキに牽制されただけで怯む様な、今までこんな弱い連中にやられて来たってのか・・・・?
呆れる代わりに怒りと情けなさで眉根に皺が依った。


「・・・一旦、出直そう?」
カレルが聞く
ベルは答えない
代わりに黙って頭を巡らせる

「・・・」
「?」

刹那、ベルの姿が視界から消えた。
僅な風を残した後、次の瞬間に一人倒れた。倒れ伏す間際の獣人の影からチラリと銀髪が覗き、股の間を前転。足蹴りでバランスを完全に奪われた男は派手に尻餅をつき、頭を壁にぶつけて失神した二人目を再びナイフを構えて向かってきた獣人に蹴り投げ三人目

今度はカレルが呆ける番

「大事なモンなんだろ?」
「え!?」
「・・・・闇市に流れちゃ取り戻すのは無理だ」
「・・・!」

カレルの返答を待たずにベルは軽業師の様な動きで付き出された拳をかわし、獣人の頭と壁を踏みつけて半回転跳躍する。
重力と共に蹴り降ろされた右足が脳天を直撃した
「・・・・4人目ェ!」

再び甲高い金属音

ベルの死角から刃物で切り付けようとしたリーダーの男の手から、カレルが素早く刃物を叩き落とした音

素早く刃物を拾い、飛び掛かりながら男の喉元に突き付けた。
「ひっ・・・・!」

「ベル!」

「・・・・・・・・」

押し倒した男に寸でで刃物を突き立てながら、紅い瞳で睨み据えたベルは束の間押し黙っていた。
刹那、右手が男の首や胸を探り、少しして胸元から蒼く光る物が覗いた。
「あっ・・・・」
「ダチのモンだ、返せよ。」

恨みや怒りを口にする事も無く、淡々と男の首を飾っていたそれを引き千切り、もう一度目に入れた情けない男の姿に満足と哀れみの混じった笑いを鼻で現した。

「これ、じゃねェか?」
男から剥ぎ取った物をそう言ってベルがぶっきらぼうに突き付けてきた。無骨だが計算された様に整えられた蒼い石のペンダント。深い蒼を湛えたそれを銀の台座に嵌め込んだ造りは、スラムにはおおよそ似つかない上品な雰囲気だった。

千切れた鎖がやや痛々しい・・・・。

差し出されたそれを確める事もなく手にとり、涙目で抱き締めたのは紛れもなく肯定の証

「でも良く分かったね。」
「さっきコイツの首が僅かに光ったからな。もしかしたら・・・・って思っただけだ。」

動体視力の良さは獣人の血を引くだけあると言うことか。

「ありがとうベル。見付かって本当に、よかっ・・・・!」

堪え切れずに泣き出してしまったカレルの姿が少しだけ羨ましくなった。

―コイツの様に、泣くくらい大切なモンがありゃ・・・・な。―



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