気が付けば鋭い衝撃。
 視線を下ろしてみれば、鈍色の金属を、ベルセルクの腹部が飲み込んでいた。
「半端者なんて、みんな死ねばいいのにねぇ? だって、馬鹿にされてまで生きていたくないでしょ?」
 ぐり、とナイフを握った男の右手が動く。
「が、あああぁ……ああっ!」
 視界が赤に染まる。何が起こっているのか、考えるだけの余裕がない。腹部から伝わる痛みが全てを支配していた。
「腸をぐちゃぐちゃにして殺してあげるよ。楽に逝けないようにね」
 くく、と笑う男の手が真っ赤に染まる。その赤は、地面に降り注ぎ、小さな血溜まりを作っていた。
 飲み込まれる。赤に。全てが。
 ベルセルクはそれに抵抗しようと吠えた。だが、押し寄せる痛みと赤が、咆哮ごと彼を押し潰そうとしていた。
「ベル……っ!?」
 聞き慣れた声が微かに届く。この声は――マスターか……
 ずるり、と身体から何かが抜き取られる感触があった。それを最後に、ベルセルクは意識を失った。




 暗い部屋の中、赤い西日が窓から差し込んでいる。
 毒々しいその色を眺めていると、背後から何者かに抱きすくめられた。
 自分よりずっと小さく、華奢な誰か。
 ベルセルクは、その人物に謝る。悪かった。ごめんな。こんな事になっちまって。そう、ただひたすらに。
 その人はベルセルクを抱いたまま、首を振っていた。彼を責める言葉も、何も言わず。
 それでも謝り続ける彼の目から、小さな雫が零れた。それに気付いたのか、背後の人物は、ゆっくりと腕を緩める。ベルセルクは、振り向き、そして――


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