5 ![]() 「僕達は忙しいんです。行こう、ベル」 立ち去ろうと踵を反すカレルだったが、突っ慳貪な言い方が気に入らなかったのか即座に2、3人が後に回り込む。各々手にはパイプやナイフを持っている。 「俺達に向かってずいぶんとナメた口を聞くじゃねぇか。お前、新入りか?」 「気分を害したのなら謝ります。ですが、それ以上をする気も意味もありません」 先程の柔和な空気が嘘の様な凛とした態度は相手の手中に光る鋭利な金属を見ても揺るぐ事は無かった。 やっちまえ、とお決まりな台詞を皮切りに集団の内数人が飛び掛かり、二人は身構えた。 リーダーのと思わしき人間が加わらない所を見ると腕っぷしに自信が無いのか、若しくは二人が手負ってから叩きのめす算段なのか・・・・相手数人の攻撃を適当にかわしながらそんな事を考えていたベルは、頃合いを見て今まで通り守りの体制を取る。 ――ここで追い返しても次は倍でやって来る。今、満足させりゃ少くとも数日は・・・―― 「痛てェし、めんどくせェけど・・・」 ―――キキィィン!――― ベルが一人ごちたのと同時に甲高い金属音が鳴り響く。 顔を上げれば何人かが倒れ、残りが呆気に取られ・・・彼等が手にしていた得物はそこかしこに散乱していた。 「??」 「ベル!?」 状況が飲み込めないベルは、カレルの呼び掛けにハッ、と我に返る。彼の手には見た事の無い物――彼の身長程の先端に刃物が付いた鎖状の物が握られていた。 カレルがやったんだろうか。 瞬く間の出来事に現実味が付いてこないのか、フ、と息が抜けた。 「ンだよ、強ェじゃねェか」 何と無しにそんな事を思う。 冷静さが戻り、体勢を建て直そうと必死な集団に目を向ける。 一人が怖じ気付いて逃げ出した。 ![]() 前 / 次 ![]() |