少年は笑った 少女は問うた。 それは恋ではないのか? 少年は答えた。 いいえ、恋ではありません。 少女は首を傾げた。 その人のことが好きなのだろう? 少年ははにかんだ。 もちろん、好きですよ? 少女は訊ねた。 それでは愛なのか? 少年は首をふった。 あなたの思う愛とは少し違うのです。 少女は嘆いた。 君の言うことは、私には難しいらしい。 少年は笑った。 自分が理解出来ているなら、それで良いのです。 簡単なことです。 あえて例えるのならばやはり愛なのでしょう。親愛にも、友愛にも通じる。 他人に興味はありません。自分が幸福であるのならば、それが一番だから。 他人を省みることは出来ません。なぜなら、自身が蹴落とされた存在だから。 僕のこの感情は恋ほど甘くも、愛ほど苦しくもないのです。 しかし、恋より純粋で愛より重いのです。ドロドロに溶けた感情を薄い膜で覆って、繊細な均衡を保って存在している。 つついたら壊れてしまうような、そんな均衡。 他人に興味はありません (――本当に?) 他人を省みることは出来ません (――本当に?) 仲間が無事ならとても嬉しい。 仲間と笑っていられる時間がとても愛おしい。 僕に仲間を作ってくれた人。 その人に対する愛は他人に理解されなくても良いのです。 *** 他人を信用したり愛情を向けることにある種のトラウマがあったあっくんの話。 他人に向けられずに歪んだ愛は自分に向かって突き刺さる…。 |