追いかける背中が遠いと感じたのはいつからだったか。 前まで隣を歩いていると思っていたのに、気付くと自分よりもはるか先を進んでいる幼馴染み。 「遠い、なあ…」 呟いたところでこの距離が縮むことはない。 「…遠いよ…」 引っ越してからも文通はしていたし、遊びに行ったこともある。ただ、それらも月日を重ねるごとに徐々に減っていった。 久しぶりに会って、旅に出て、一緒にロケット団を倒して、でも… 幼馴染みである琴は頼りになる。情けないけど、失敗が多くて手持ちに世話を焼かれる自分よりはるかに。 「…っ」 下を向いてぎりっと唇を噛む。と、前方に誰かの影が立った。 「おい」 上を向くと、憮然とした顔の琴が立っていた。 「…あ、」 「遅せーんだけど」 「ご、ごめんね。すぐ」 行く、の一言は琴が李桜の頭を片手で押さえ込んだことで言葉にならなかった。 わしゃわしゃわしゃ 「う、わ、わっ、ちょっ、何!?」 乱暴な手つきで頭をかき回した後、サッと手櫛で元に戻される。 「なに悩んでんのか知らねーけど、あんま思い詰めんなよ」 「でも、さっきだって…」 「ラジオ塔でのこと言ってんならお門違いだ。はっきり言ってあんなのオレ一人でも余裕だ よゆー!」 ふん、と胸をはる琴の体のいたるところに痛々しい包帯が捲かれていた。 いやでも視界に入る白は、気にするなという方が難しい。 「…李桜!」 「うぇ!?」 「手出せ」 ビクッと条件反射で両手を出すと、しばらくごそごそとポケットとを漁った後、コロンとした個包装が置かれた。 「…いちごみるく…」 「おう、好きだったろ?それでも舐めて落ち着け」 「覚えてたんだ?」 「昔は会う度にせびられたからな」 「ふふ、そっか…ありがとう」 |