ネタだものByいつお | ナノ

悠久


自分の存在を意識した瞬間からずっと独りで生きていた。おなかもすかない眠気もこない、娯楽なんてあるわけがないだだっ広く暗い空間で。寂しくはないと言えば嘘になるが、それは真実ではない。狂えたら楽だった、でも狂えるわけがなかった。なぜなら私はトクベツな、そう設定されて生み出された存在だから。ひとたび目を閉じて、再び開けたら目の前には知らない風景にいけ好かない顔だなんて、そりゃあ空間を引き裂きたくもなる。首に付けられた赤く冷たい鎖が気管を締め付けて苦しいが、捕らわれるのも癪に障る。目の前の人間を吹き飛ばし、後からやってきた人間とバトルをし、それから闘う意味が分からなくなって思わず膝をつく。ああきっとこれで元の場所に戻れるんだという漠然とした意識があった。寂しくはないが、ただただつまらないあの空間に。ずっとずっと独りだったのだからこれからもまたずっと独りでいるのだろう。変わり映えしない広く暗い空間にぽつんと佇むという行為も、目を閉じてじっとしていることも、確かにつまらないが、でもきっと自分にはそれが一番合っている。だから…


「私と一緒に、旅をしよう」


自分を見つめる自分と同じ紅い瞳に、つっかえながらも意志の強さを感じさせる言葉に、差し出された傷だらけの手を取ったのはただの気まぐれで、他意はないのだ。


今まで色のなかった世界は、
案外綺麗な色をしていた。


***

その後差し出されたボールを見て、自分の主人になるであろう人を叩いたのは、懐かしい記憶である。




(パルキアの遠い記憶と新しい出逢い。差し出されたのはまさかのネットボール。「マスターボールはもったいないから使えないんです」)






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