※※続*かみのけ 「ちょっと待ってろ」の言葉通り、決着はすぐに着いた。逃げ去るアクア団を後目に、俺は未だ呆然としりもち状態。 照実が眼鏡を拾い上げて近づいてくる。はっとしたように走り寄る凪沙が視界に入った。 「俺の雄姿は、ゲホッ…ちゃんと見たんだろうなぁ…ゲホッゲホッ」 「…ぼやけてたよ」 「はっ、だろーなぁ…」 わり、少し血ィ付いた…と屈んで差し出された眼鏡を受け取る。一瞬ふらついて、そのまま照実は倒れた。 足下にジワリと溜まっていた血が跳ねて頬にかかる。 生暖かい それ は頬を伝って首を通り、襟元を汚した。 床に倒れ込んで原型に戻った照実を見てようやく事態の深刻さに気付いた。 「…照実…っ」 凪沙に手伝って貰って急いで止血用の当て布をしてボールに戻す。 「とりあえず、急いで病院に…」 「伊剣!」 泣きそうな顔をした凪沙が俺の袖を掴む。 「…伊剣、ごめんなさいあたしが」 「避けなければ?…指示したのは俺だ。…俺の、責任だよ」 とりあえず満流に最寄りの町へ飛んでもらおう。 「もう大丈夫ですよ」 待ち合い室で待つこと数時間、ジョーイさんはにっこり笑ってモンスターボール5個を差し出した。 …いっこ、たりない。 「あの、」 言いよどむ俺に、ジョーイさんは何かを察したように穏やかに微笑んだ。 「バクーダのことね」 「…はい」 「確かに傷は深かったけれど、命に別状はないわ。今は麻酔が効いて寝ているけど…もうすぐ起きると思うから、行ってあげてね」 「…当然です…!」 眼鏡はあるのに視界がぼやけてジョーイさんの顔が見えなかった。 ジョーイさんに教えてもらった部屋に入った俺は開いた口が塞がらなかった。いつの間にか出てきてた凪沙も目を見開いている。 「…か、髪が…無い…!?」 「開口一番に誤解を招く言い方はするもんじゃねぇなー」 ちょっと切っただけだ!男前が上がったろ?とあっけらかんに言い放つ三十路過ぎのおっさん。 確かに背中の真ん中まであった髪の毛は今はバッサリ切られて肩より上だ。 「照実、傷は?」 驚きから回復した凪沙が尋ねる。男前発言はスルーだ。 「お、なんだ心配してたのか?」 「…してないわよ!伊剣がまだ放心状態だから変わりに聞いてあげてるの!」 「可愛くないね…」 軽口を叩き合う二人にようやく肩の力が抜ける。 「…はぁああー…」 「おいおい溜め息つかれちまったぞどうすんだ凪沙」 「あんたのせいよ」 ひでーなーと笑う照実の入院服からは包帯がチラチラ見える。 研究所での出来事がフラッシュバックする。 「どうして…」 「ん?」 「どうして人型になって俺を庇ったんだよ。原型ならこんな重傷にはならなかったはずだろ」 「あー…」 照実は苦笑いだ。 「原型より人型の方が小回りきくし速く動けたからかな、それに…」 「突き飛ばすのに原型じゃあ、大惨事だろ」 *** タイトル正式名称 「てるみがかみのけをきったひ」 何が書きたかったのかよく分からなくなったからその辺は脳内補正でお願いします。 |