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「お疲れ様でした!」


出演者や監督達に挨拶を済ませ、静かに部屋をあとにした。


普通に歩いていた足は段々と足早になり、外へ出た時には既に走っていたのだ。


「ふふふふ………」

「キモい、なに一人で笑ってんだよ、なまえ」

外に出た瞬間に言われ、声の主は振り返らずも誰だか分かっていた。


「遥さん!聞いて下さい、私、」

「知ってる、一発でオッケーだったんだろ。さっき監督が言ってたからな」

「そうなんですよ!」


自分の想いを全てぶつけた、その気持ちを言葉にするのが難しいくらい。


監督や周りが終わった瞬間に唖然と見つめられ、失敗したかと焦ったが一発オッケーだった。


それを一番最初に遥に伝えたくて仕方がなかったのだ。


「私、いま凄いわくわくしてます!」

「とりあえずお疲れとでも言ってやるよ」

「………はっ?」

「きちんと言い付け守って頑張ったみたいだからな、褒美だ、飯食いに行くぞ」



あまりの展開に脳が追い付かず、先を歩いていた遥を追うのを忘れてしまった。


「今のって、褒めて…」

「褒めてねぇよ、調子乗んな」

「えっ、この距離で聞こえてるんですか!?」

「当たり前だ、俺の耳を舐めんなよ」


置いていくぞと付け足され、慌ててなまえは遥の後を追った。


空は一面夕焼けの色に染まり、そういえば彼と約束したあの日もこんな空だったとふいに思い出す。


「遥さん」

「なんだ」

「私、もっと頑張って、もっときらきらした箱を開けて、世界まで飛んじゃいますね!」

「はっ、飛んでるのはお前の頭だけだ」

「えー、遥さんも飛ぶんでしょ?」


広い広い世界にただ一人、希望もなにも持ち合わせていない私に、希望を与えてくれた。


小さな箱に囚われていた私を、世界の果てまで行って、もっときらきらした宝箱を見付けに行く。


私達は、もっと高く広い場所へ飛んでいく。


「世界はまだ広いんだ、こんなことで浮かれんな」

「分かってますよ!あの、遥さん」

「ん?」


そう、あなたは私に魔法をかけてくれた。
掴むのも開くのも自分次第だけれど、


私にとってあなたは魔法使いのような、不思議な存在。


「ありがとうございます」

「キモい」

「ソッコーで言わないで下さいよ!」

「礼は一人前になってから言え!」

「いっ、ちょっ、デコピンはないですよ!」


あなたと私はまだまだ小さな箱にいるけど、


いつか私は飛んでみせるから、
ちゃんと見守って下さい、私はあなたにどこまでも付いていきますから。


私自身が新しい世界へ飛ぶ翼。


勇気を出して、開けてごらん。


きらきらした世界へ、









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