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初めて会った時の印象はまず彼女の漆黒の髪の毛だった。
漆黒の髪の毛は珍しく、いつもなまえは気にしていたのを覚えている。



本人はその漆黒の髪が嫌いらしく、髪を鋤いてはため息をよくついていた。
最初は皆が驚いた中でアテナだけは違った。



『凄く美しい髪ね』



嘘も偽りも同情もない言葉にいつしかなまえはアテナに心を開き、
アテナが受け入れたからこの色が好きになれたとなまえは以前言っていた。


誰にも言ったことはなかったが、彼自身も彼女の漆黒の髪を心底美しいと思っていた。



最初はアテナのお世話役にしか見ていなかったが、
いつしかその美しさに惹かれていた。



全てを包むような優しい笑顔、こんな自分には勿体ないほどで、
触れたくても触れられない、手を伸ばせばいつだって届く距離なのに…



実際アテナになまえの護衛に付くと命じられたとき夢だと思った、
だけど近くにいればいるほど苦しく、改めて自分の血を疎んだのだ。



「アテナ様の聖闘士だって分かってるけど、私はアルバフィカがずっと好きだったの、だから…」



早口気味に想いを告げるなまえの体がふわりと包まれ、
驚いて顔を上げれば微笑むアルバフィカの顔が映った。



「アルバフィカ……」

「怖くないからか、確かになまえなら怖くない、
やっと君の温もりをこの手で触れることができた、」



これ以上幸せなことはないだろう、
アルバフィカは心の中で呟いた。



風に靡く美しい漆黒の髪も、太陽のように眩しい笑顔と優しさも、ぜんぶ愛しくて仕方がない。



「髪の色が皆と違うけど、私のこと好きなの?」

「君の漆黒の髪には薔薇の紅がよく似合う、私はなまえのその髪が好きなんだから。君がどんな色をしていたって私の気持ちは変わらない」

「ありがと……」



幸せはいつだって近くにあるのに、
自分に臆病になって手を伸ばさない。



温もりだって腕のなかに感じるのに、
ずっと君を遠くに感じていた。



だけど、



今日からはこの手で守り抜くから…











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