4
名字が『寅谷』になり、二人の宝物を授かった。
名前は真っ先に『冬』を付けたいと、彼は嬉しそうに言った。
――あの冬の日、君と一緒にこの先も生きたいって思えた。
君がいなかったら手術を受ける決心がつかなかった、
今の幸せもきっとなかったと思う。
夏まで生きられなかった僕が冬を過ごして、春にまた君と出会って今がある。
ステキなことじゃない?―――
「ママー!おわったよ、」
「…………あっ!時間が…」
娘の声で我に返ると、幼稚園に送り出す時間が迫っていたことに気付いた。
双子の姉、冬華は双子の弟の冬哉と共に身支度を整え、玄関までやってきた。
なまえは家をそのままにし、自宅の鍵を持ち、子供を連れて外に出ることにした。
幼稚園のバス乗り場は直ぐ近くで、こういう時に助かったと思ってしまう。
「ちょっと走るよ、間に合わない!」
「ママが悪いんだよ、とうやもじゅんびしたのに」
「ふゆか、ママをせめちゃダメ」
「優しいのね、冬哉。ありがとう。次からは気を付けるね?」
双子でも性格は逆だ。
お転婆でいつも元気いっぱいの冬華、大人しいけど心優しい冬哉。
二人はかけがえのない宝物。
大好きな人と一生守り抜くと誓った、大切な宝。
「ま、間に合った………」
最後は前に1人抱っこ、後ろに1人おんぶして走ることになった。
1日分の体力を使った気がして、バスに二人を乗せる頃には激しく息切れをしていたのだ。
「じゃあ、冬華ちゃんも冬哉くんも、ママにいってきますして」
「「ママ、いってきます!」」
「い、いってらっしゃい!しっかり遊んできなさーい!」
バスから二人はなまえに手を振り、それに笑顔で手を振った。
なんだかんだ言って、自分の子供は凄く可愛い。立夏も子供たちをこれでもかと言う位可愛がっている。
愛しい我が子と、愛しい人とずっと幸せが続いて欲しいと願わずにはいられなかった。
「よし、帰って片付けしなきゃ」
今日も気持ちいいくらい晴れている、洗濯物がよく乾く。
そんなのんびりとしたことを考えながら、なまえは家路へと急いだ。
.
[back]