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気付いたら手を差し伸ばしていて、
聖域から連れ出してしまった。



ただ自分を見つめる瞳が哀しみを帯びた色で、
それを見るのが嫌で仕方ない。



心のどこかで笑って欲しいと思ってしまった。



「お前が、なまえがそういう顔をすると何故だか嫌になる」

「アローン……」

「どうしたら……」



彼は消えそうな声で呟いた。



それは本当に彼がまだアローンとしての心があるのかと疑うくらい、



彼はアローンと同じ表情で見つめていた。




















『どうしたら、笑ってくれる?』




















「大丈夫、私は大丈夫だから…」



「なまえ?」

「私は私の意志であなたの手を握り返したの、
だからそんな悲しい顔をしないで…」



ハーデスの頬にそっと手を添えたなまえはそう言ってハーデスの目をしっかりと見つめた。



この想いが嘘ではないことを知ってほしくて、
本当は冥王とか聖闘士とか聖域とかどうでめ良かった。



ただアローンの側にいたかった。



ハーデスとして目覚めた今でも想いは変わらない。



「悲しい顔か……、そうだな、お前が笑っていてくれるなら余はそんな表情はしないだろうな」



「私が、笑う……?」



アローンの記憶の中にある彼女の笑顔はどうしてか消えなかった。



テンマやサーシャのことよりも、なまえとの記憶はどうしても消えない。



それが苦しくてもどかしくて、
光に手を伸ばしている気がしてならなった。
闇である自分とは反対の光に……



「私はどんな姿でも絶対にあなたの側にいるから、」



慈愛に満ちた彼女はどんな女神よりも美しく儚い、



壊れないようにそっと抱き締めれば返してくれて、
冥王として人間のなまえにこんな気持ちを抱くのは罪に等しいだろう、



だけど願わくはこれを誰にも邪魔をされたくない、
一瞬だけ冥王であることわ忘れてしまう時間だった。



「余と共に来るが良い…」



世界が終わりを迎えるその時まで、ずっとずっと……








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