3
「最初はブレードチルドレンとか分かんなくて、
勝手にここまで来ちゃったけど、後悔してないよ」
あの時、火澄に向けて言った決意は嘘ではない。
少しだけ恐怖を感じたが、彼がこうして前を見据えて、
絶望の中にあるほんの少しの光の中を進もうとしている。
だったら、自分に出来ることは一つだけ。
「私ね、どんなに絶望にあっても光を見付けて、一人で這い上がって強くなった歩が好きなの」
「なまえ……」
理緒の時も、カノンの時も彼は絶望の淵に立たされて、それでも光を見付けて這い上がってきた。
側で見てきた、そんな彼にいつしか惹かれていたんだと今さら気付いてしまう。
だから、
「この先は、俺に言わせてくれ」
「うん……」
「俺にはなまえが必要だって気付いた、俺の側でずっと笑っていて欲しい」
闇の中で見えた光は君だった。
どうしようもない暗闇でさ迷っても、
君の元へ帰ることが心の道標になっている。
君は気付いているだろうか、
君は無力なんだと前に嘆いたけど、
ここまで来れたのは、君が信じて待っていてくれたから。
それは誰にも出来ない、君だけの力で……
「必ず、帰って来るから。俺の、自分自身の力で……」
ぎゅっと歩はなまえを抱き締め、それに力一杯応えた。
こんなにも愛しくて、離してしまうのが惜しいくらい、ずっと抱き締めていたい。
ずっと憧れて、欲しかった温もりは確かにここにあった……
「勝ってね、歩。私は待ってるから……」
「ありがとう、それだけで救われた気持ちになる」
「大袈裟だよ、私は…」
「いや、なまえは俺を沢山救ってくれた。どんなに絶望の壁が立ちはだかっても、待っていてくれた。信じてくれた、それが救いになったんだ……」
だから君が待つ場所に帰ろうと、生きて、君が笑ってくれる場所が自分の在るべき場所だから。
君とならこの先も一緒に光に進める、
「いってくる、そろそろ時間だ……」
「いってらっしゃい、歩の夕飯楽しみにしてるからね!」
「分かった、何がいいか考えとくよ」
当たり前のような日常の会話さえ幸せに感じる。
くすぐったいような、照れ臭いような、
真っ直ぐと君の言葉が胸に花を咲かす。
君の笑顔を見る為に、もう迷わない……
全てが終わったら、君をこの腕いっぱいに抱き締めるから。
待っていて……
完
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