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ひとつだけ願うのなら
※こちらは以前にクリスマス期間限定で載せたものになります。
名前変換付で再編しています。
「プレゼント、ですか?」
珍しく誰もいないラウンジで食事をしていた際に主であるなまえにふいに聞かれた。
突然の言葉になんと答えていいのか返事を詰まらせていたのだ。
「クリスマスプレゼントをお世話になっている双熾さんに渡したくて、やっぱりちゃんと好みとか聞いてからの方がいいかなって……」
遠慮がちにそう言うなまえに、胸の奥から熱い気持ちが込み上げてくる。
その気持ちだけで嬉しくて嬉しくて、今すぐにでも抱き締めたい衝動に駆られた。
だが、真面目に聞いてきた彼女にそんなことをするわけにもいかず、双熾は頭を悩ました。
「僕はなまえさまから頂けるものでしたら何でも………」
「絶対に双熾さんならそう言うと思いました、でも今回はワガママ言ってください!いつも私のことばかりで………」
いつも自分を優先して、たまには双熾に甘えて欲しいと願った。
クリスマスも近いとのことで、ここはなにかプレゼントを渡したい。
でも、彼の好みなど全然知らないことに気付く。
周りに相談した結果、本人に直接聞くのがいいとのことで思い切って聞いてみたのだ。
やはり予想通りの答が返ってきた。
しかし、今回はここで引き下がる訳にもいかなかったのだった。
「なにか必要なものとか、そういうものがあれば………」
「欲しいものですか………」
こんなに悩む双熾を見たことがなく、困らせてしまったのではないかと不安になった。
双熾の欲しいものなど本人にしか分からない、
ここは本人から出たものを優先しようと思ったのだ。
「そうですね、一つだけあります。」
「えっ!本当ですか?」
「はい。」
ニッコリと笑う双熾になまえは目を輝かせながら食い付いた。
その姿があまりにも可愛らしく、抱き締めてしまいと思ったが双熾は堪えながら口を開いた。
「あなたです、」
「…………………………はい?」
普段通りの笑顔なのに、その口から発した言葉はあまりにも衝撃だった。
「僕が欲しいのはなまえさまだけです、ですのでください。」
「いやっ、ちょ、そういう意味じゃなくて…………あの、」
「そういう意味じゃなく?」
あくまで笑みを絶やさない双熾に激しく動揺する。
物を言ってくれると思っていた為、この言葉はさすがになんと言っていいか分からなかった。
「大丈夫です、優しくします。男として、」
「いやいや!そういう問題じゃなくて!」
そっと手を握られ段々と顔を近付けてきた双熾。
あまりの恥ずかしさに顔を思い切り背ける。
「そ、双熾さ………」
「たっだいまー☆帰ったよー!!」
顔がとてつもなく近付いた所でラウンジのドアが開き、明るい声が響いた。
双熾から急いで離れると、荷物を手にした夏目がいたのだ。
「お、おかえりなさい!」
「ただいまって言いたいけど、なんか二人距離近くない?」
「た、たまたまです!たまたま!」
夏目にそう聞かれて力強く否定すると、ふーん、とだけ返ってきた。
後ろから同じく荷物を手にした野ばらと連勝が入ってきた為、この状況を悟られないように野ばらの元へ駆け付けた。
「なまえちゃん!買ってきたわよ、クリスマスパーティに必要な道具!飾り付け今からやりましょう!」
「ありがとうございます!手伝います!」
元気よく返事をし、胸のドキドキをそれで誤魔化そうとした。
そうでもしないと皆に悟られそうな気がしたから。
「ねぇ、そーたん。なまえちゃんから
プレゼント、貰わないの?」
ふいに夏目に聞かれ、双熾は一瞬驚いたが直ぐにいつもの表情に戻った。
「聞いていらしたんですね、」
「いい雰囲気だからそっとしたんだけどねー」
そう言って夏目は野ばら達の所へ行き、クリスマスパーティーの準備を手伝った。
彼女の姿を遠くから眺め、自分の口元が緩んでいたことに気付いた。
「僕はあなたからプレゼントをもう貰っていますよ………」
彼女が毎日心から笑ってくれること。
昔からそれを望んでいた。
それを自らの力で過去を乗り越え、そして今の笑顔が、幸せがある。
それを見られただけでいい。
どんな宝石よりも眩しく、太陽の光よりも優しく包んでくれる。
「双熾さん!ここの高い所をお願いしてもいいですか?」
ずっと願って望んでいた笑顔を隣で見られること以上のものを望まない。
「はい、ただいま参ります。」
少しだけ欲を言えば、
この想いがあなたに届きますように……………
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