君が泣いた分だけしあわせが訪れますように
※連載主の妹のお話になります。
























「また、来てる……」


ノートパソコンの画面にはメールボックスに新着メールが表示されている。
送信者は大体予想は出来ているし、内容もある程度は分かっていた。


マグカップをそっとテーブルに置いて、マウスを動かしてメールを開いた。


やはり、送り主は定期的に来る人物からである。


「SSって、暇なの?」


メールを見ながらポツリと唯は呟いた。
答えが返ってくる訳ではない、だけどいつもメールを見ながらそんなことを思っている。


あれから、月日は少しだけ流れた。


今は日本を一人離れているせいか、心穏やかに過ごしている。
今まではこんな安らいだ気持ちになることはなかったのに、不思議なくらい心は落ち着いていた。


それはきっとあのことがあったから、


姉である彼女と和解が出来たからだろうか、


それとも、お節介な先祖返り達と接触して、
偽っていた自分ではなく、本当の自分を受け入れてもらえたからなのか。


それはどれだとは分からないけれど、こんなに穏やかに過ごせるのはきっと全てを乗り越えたからだと、今なら言える。


過去のことを少し思い出しながらメールを眺めていると、思わぬ言葉に動きが止まった。


「へー、双熾さんと付き合ってるの?え、まだ付き合ってなかったの、あの二人……」


一時は想いを寄せていた人の顔を浮かべると、自然に姉の顔も出てくる。
相思相愛なのは分かっていたけど、とっくに付き合いをしていると思っていた唯にとってはまだだったのか、という思いが正直なところだ。


あの二人は昔からお互いに惹かれあっていたのだと思う。
境遇が似ているからとか、そういうことを抜きにしてもなんとなくそう思っていた。


ここまで来た道のりを考えるとそんな簡単なことでもないのだろう、
でも今は二人のことを素直に祝福することが出来る。


本人に直接言うのはていこうがあるけれど、
でも確実に普通の家族のようになるには、自分から歩み寄るのはあともう少しだけ時間が必要だと思った。





『分かってる、だけど、私達はお互いに何も知らない、双子で生まれたのにおかしいわよ!唯のこと、もっと知りたいの!』



本当にお人好しでバカなのかと思った。
あんなことをした自分をそう言っているのはあり得ないと今でも少しは思う。



『私は、もっと唯を知りたい。だから今日からお友だちになって。それに、妖館の皆とも仲良くなってくれると嬉しい………』



双子とか家族とかそういうことではなくて、友達と言ってくれた。
それに彼女の大切な人たちと仲良くして欲しいって言うから、ここまで来るともうなんて言っていいのか分からなくなる。



彼女の言葉を最初はそんな風に思っていたけれど今は少しずつ変わっていった。


こんな変化が訪れるなんて夢にも思わなかったことだ。
唯はメールに添付されている写真をクリックし、少しだけ笑った。



「笑ってる、みんな……」


写真に写った人達の姿はみんな笑顔で、思わずそれを見つめながら笑みが溢れる。


ああ、きっとこの中に入っていたら幸せだったのだろうか。


ふと、そんなことを思いながらメールを最後まで読むとそこには信じられないような言葉が書いてあった。














『早く妖館に遊びに来てね、みんな待ってるわよ 野ばらより』














「バカな人達……」


ポツリとそう溢れた言葉。


近くにあったカレンダーを眺めながら、唯はそのメールへ返信を早速送ることにした。



「お正月には、帰ろうかな……」



素直に認めたくはないけど、でも確実に良い方向へ向かっていることは事実で。



あとは、自分がほんの少し勇気を出して、




みんながいる場所へ




『ただいま』




って言って、それから………


















思いを馳せながらそんなことを考えていると、




みんなが笑っている顔が浮かんだ………













番外編 完
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